いちご
瑠衣斗は、慶兄が働いている土地でもあると言う理由で、1人でこの土地へやって来た。
でも、慶兄に頼る事もしずに、1人で暮らしてきた。
いくら兄弟とは言え、近くに住んでいても、瑠衣斗が慶兄に会う事は滅多になかった。
しばらく宗太と二人で様子を見ていると、瑠衣斗がこちらに顔を向けた。
そのまま慶兄と並んで歩いて来る様子からして、宗太と私の元へ向かっている事は分かった。
「家族会議終わったみたいだね」
宗太にこっそり話掛けると、
「みてえだなあ~」
とのんびりと答えた。
すぐ横までやって来た時に、慶兄が口を開いた。
「そろそろ戻るぞ」
慶兄が顔を緩めてそう言って、私と宗太は、お尻の砂を落としながら砂浜から立ち上がった。
帰り道は、左に瑠衣斗、右は慶兄に挟まれ、何だか微妙な位置に落ち着いてしまい、私が口を開く事はほぼ無いままだった。
宗太は瑠衣斗の横を歩き、私達とまんべんなく会話をして場の空気を柔らかくしてくれたようだった。
少しづつ太陽は海に近付き、だいぶ時間が経ってしまった事を印象付けている。
桜の花びらが波打ち際辺りを歩いていた私達の方まで舞って来ていて、何だかとても不思議な光景だった。