いちご
「宣戦布告されちゃったよ」
宣戦布告…?
ポツリと呟いた慶兄を見ると、口元だけで笑っていた。
「何が…?」
首を傾げて問いかけると、慶兄が優しく私に向かって微笑んだ。
慶兄の瞳に、オレンジ色が映り込み、キラキラと輝いている。
「何でもないよ」
「えぇ?本当分かんない…」
そう答えた私に向かって、慶兄はニコニコと笑って見せた。
「夏が楽しみだなあ~。あいつらが居ると暇しねえな」
そう言って慶兄が目を向けた先を追うと、男四人組がキャッチボールをしながらギャアギャアと騒いでいた。
「うん、そうだね。うるさいし」
思わず顔が緩んで、何だか温かい気持ちになった。
このうるさい仲間が、いつも私を温かく見守ってくれている。
そう思うと、私はひとりぼっちではないと一瞬でも思えた。