いちご
会計してる間に、財布を鞄から取り出すと、瑠衣斗に押し返された。
「いいよ。俺が出す」
「なんで!!いいってば」
いいからいいから~なんて言いながら、支払いを済ませてしまい、カゴを持って行ってしまった。
慌てて後を追うと、手際よくビニールを広げた。
「悪いよ、払わせてよ」
隣に立って瑠衣斗を見上げそう言うが、瑠衣斗は手元を見たまま答えた。
「作ってもらうしいいんだって。今度何か奢ってもらうかな」
「え~…もぉ、分かったよ」
何度も言うが、瑠衣斗は超頑固者だ。
こうした場合、素直に瑠衣斗の言う事を聞いておいた方が早い。
全てビニールに詰め込んでしまうと、私がカゴをレジへ戻し、瑠衣斗が袋をぶら下げて店内を出た。
車にたどり着くと、そのまま乗り込み、助手席の足元の隅の方へ袋を下ろした。
後部座席へ置きに行く事が面倒らしい。
広いので窮屈ではないが、瑠衣斗は変な所で大雑把だったりする。
シートベルトを締めると、ちょうど瑠衣斗がエンジンを掛けた。
「俺んちでいいか?」
ハンドルに片方の腕を折って、もたれ掛かりながら私に向かって聞くと、ポケットから器用にタバコを2本取り出し、1本私に手渡した。
「うちでも大丈夫だけど?」
受け取りながら答えると、ふいに瑠衣斗が視線を下ろした。