いちご
フローリングに座り込み、救急箱を棚から引っ張り出して、ティッシュで傷口の周りを囲いながら、傷口に消毒液を吹き掛けた。
「あ゛~しみる。キライ」
「我儘言わねえの」
クスクスと瑠衣斗が笑う気配が背後から伝わってくる。
しっかりと絆創膏を張り付けて、救急箱を棚へ戻した。
「ももはそのままテレビでも観てなさい」
「…なんで」
不貞腐れたように答え、後ろを振り返った。
小気味良い音を立てながら、瑠衣斗は手元を見たままで、リズム良く包丁を操る音が響いていた。
多分、私が指を切る羽目になってしまった玉ねぎを切っているのだろう。
「可愛い手が傷だらけになるぞ」
手元を俯き加減で見ていても、笑っている事が丸分かりだった。
いかにも下手クソと言わんばかりの言葉に、少しムカつく。
「…悔しい」
「もっと悔しがれ」
「ムカつく」
「もっとムカつけ」
「………ハゲ」
「ハゲてねえ!!」
ハゲてしまえ!!