いちご
「……珍しい」
普段、お酒が弱いので飲まない私が珍しいのだろう。
でも驚きすぎでしょ。
「たまにはね」
そう言って瑠衣斗を通り過ぎて缶ビールを片手にソファーへ腰掛けた。
「飲み過ぎんなよ」
見上げると、口元を吊り上げて笑う瑠衣斗は、そのままリビングを出ていった。
「はぁ…心臓一個じゃもたないよ…」
ドアが閉まってしまうと、思わず一息ついた。
恋って…心臓が忙しくなるんだね。
「恋…かあ…」
目の前のテレビの映像なんて頭に入ってこない。
頭を埋め尽くすのは、瑠衣斗だけだった。
結局…あのキスは何だったんだろう。
私は、瑠衣斗が好き。でも、気持ちを伝えた訳でもないし、通じ合った訳でもない。
それに…瑠衣斗には確か、好きな人が居たはず。
「………」
やっぱり、心臓一つでは足りそうにない。