いちご
「…おい、もも…」
ん~…何か瑠衣斗の声が反響してる気が…。
「…る~がいっぱい…」
目の前には、お風呂上がりの、ロンTを着てジャージを下に履いている、何重にもなった瑠衣斗が居た。
「どんなけ飲んでんだよ…」
呆れた顔の瑠衣斗が、いっぱい居る。
「え~っと~…3?」
ビックリする程お酒が弱い私は、絶対父親譲りだと思う。
お猪口一杯で救急車で運ばれたらしい父親は、全くもってお酒の分解酵素がない。
逆に母親は、どんなに飲んでもケロッとしていたザルだった。
飲んで吐いてを繰り返せば、きっと母親みたいになれるかも?なんて考えた事もあった。
「弱すぎる…ビックリするわ」
「ありがろ~」
意識はハッキリしているが、ヘロヘロなのは分かる。
でも、寝て起きたらコマごとにしか覚えていない。
そして、自分の隠れた性格にも、何度か驚かされた。
「飲む~?」
「飲まねえ~よ」
ニッコリ笑うと、瑠衣斗はキッチンへ入っていった。
「うぅ~ん、もうダメらあ」
酔っていても、瑠衣斗の今の笑顔だけで、心臓が跳ねてしまう。
呂律が回ってないけど…気にしない。
「何がダメなんだよ」
笑いながら戻って来ると、瑠衣斗は隣へ腰掛け、私にミネラルウォーターを差し出した。