いちご


「…いらね」


「飲~め」


だだっ子炸裂だけど…気にしない。


クスクス笑う瑠衣斗は、目を細めて私を見つめ……ているようだ。


なんてったって何重にもなってるからね。


その八重歯が可愛いんだよ。八重歯が。


何だかオバチャンみたいだけど…気にしない。


瑠衣斗はそっと私の後頭部に手を回して、耳元に口を近付けると、優しく囁いた。


「…口移しするぞ」


「……いらね」


きっと酔ってはいない私なら、顔から火が出るように真っ赤になっているだろう。


でも、酔ってるからね。


「言うこと聞けよ。またキスされてえの?」


「…いらね」


「だあ~~…」


そうなのだ。私は酔うと無敵なのだ。

ただ単に我儘なだけだけど。


「飲め!!」


「…いらね」


「…はあ」


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