いちご
痛心
何だかんだで、ベッドから無事脱出する事ができて、私は今キッチンに立っている。
スウェットは、瑠衣斗が足元に隠していて、手早く着込んでから脇腹をつねってやった。
「なあ~飯食い行かね?」
「外に?」
洗顔や歯磨きを済ます頃には、時計はお昼を指していた。
「ちょっと買い物してえんだよな」
「ん~…いいよ」
とりあえず珈琲だけセットしてしまっていたので、カフェオレだけ飲んでいこうと思い、マグを用意した。
「化粧だけするね」
そう言ってソファーに座る瑠衣斗の横に腰掛け、ポーチと鏡をテーブルに置いて準備をした。
念入りに化粧水を肌に叩き込んでいると、瑠衣斗が覗き込んできた。
バッチリ目が合うが、瑠衣斗はじっと見つめるだけだ。
「…なに?」
昨日よりも伸びた髭は、何だか瑠衣斗を大人っぽくしている。
「…いや、見てるだけ」
「見なくていいから」
何がしたいのか意味が分からない。
呆れて鏡へ向き直って、化粧を再開した。