いちご
ふう。と息をついて、正面に向き直った。
改めて一人になると、夜の出来事が鮮明に蘇ってくる。
慣れているようだった瑠衣斗。
そう思うと、何だか取れない棘が胸に刺さったようで、チクチクと痛い。
今まで、瑠衣斗から女の子の話を聞いた事がない訳ではない。
ただ、彼女を作ろうとしない瑠衣斗を、不思議がったっけ。
あれだけ整った容姿だから、呼び出しをされていた事も何回かあった。
でも、彼女を作る事はなかった。
そう考え、私はまた胸をグッと詰まらせた。
そうだ。瑠衣斗には好きな人が居るんだ。
真っ直ぐな瑠衣斗は、きっとその人だけを思っていたから彼女を作らなかったんだ。
でも、思い当たる人物が居ない。
…ひょっとして地元の人?
全く帰ってない訳ではないし、私やみんなに言わないだけで、実は遠距離だったり…。
な訳ないか。