いちご
「ちょっとぉ♪まじ偶然~!!」
私とは反対の、ショップ袋と鞄を肩に掛けた腕を、瑠衣斗はブンブンと上下させられている。
「…りな」
ポツリと言った瑠衣斗は、驚いているようだが、腕を掴んだ人物は、嬉しそうにした様子だ。
…りな?だれ?
黒のミニスカートからは、白くて長い足を惜し気もなく晒し、ニーハイブーツを履いてはいるが、明らかに私よりも背はスラリと高い。ボアのパーカーを着て、髪はクルクルに巻いて盛られていた。
クリクリした目は、瑠衣斗を見上げ、唇はグロスがのって潤っている。
瑠衣斗に仲良さげに話し掛ける女の子なんて、今まで美春ぐらいしか見たことない…。
ひょっとしたら、この子が瑠衣斗の――…。
「ねぇ、飲み行かない?りなこれから帰るだけなん……あれ?こちらは…?」
急に、彼女の瞳が自分に向けられ、力の緩んでいた瑠衣斗の手から、とたんに手を離した。
「あ…えと、初めまして。ももです」
軽く会釈をして、前で手を握った。
「初めまして!!りなです」
ニッコリと笑って言う彼女は、瑠衣斗の手を握ったままだ。
胸から嫌な感覚が全身に広がり、体が震えそうになる。
この場所に居たくない…。