いちご


「じゃあ行くね!!」


鞄を肩に掛けながら立ち上がると、ジュリが私を見上げる。


ふっと笑うと、形の綺麗な唇をゆっくり開けた。


「またね、もも」


「うん。またね」


足早にドアへ向かい、慌てて講堂を飛び出した。


短時間でカロリーを消費したようで、どっと疲れが全身を襲う。


疲れた…宗太の家遊びに行こうかな。


そんな事を考えながら、人が溢れる廊下を抜けた。







外へ出ると、春の温かい風が頬を撫でた。


結局、瑠衣斗に会う事はなかった。

ふと連絡してみようと思った所で、思い止まる。



昨日はずっと、あのりなと言う子と一緒だったんじゃないかな…。


鞄から取り出した携帯を、ぐっと鞄に戻した。


別に連絡しなきゃいけない訳ではないし、大学で会わないといけない訳ではない。



瑠衣斗にとっては、ありがた迷惑かもしれない。


私は、瑠衣斗の彼女でも何でもない。ただの仲間内の一人にしかすぎないんだ……。


胸が苦しくて、何だか無性に寂しくなってきた。


そんな私は、本当に寂しい人間かもしれない。



中庭を抜け、早く誰かと会いたいと思った私は、門を出るとすぐにタクシーを停めて乗り込んでいた。




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