いちご
バスに揺られながら、今日はるぅと一度も会ってないな。
なんて考えた所で、バスが到着し、人を掻き分けてバスを降りた。
一人で歩く住宅街は、ゆっくりと群青色に空を染めていた。
ギュッと胸が締め付けられるような感覚に、眉をしかめる。
瑠衣斗は何がしたいんだろう。私にはさっぱり分からない。
はあ、と溜め息を漏らして、ふと視線を上げた。
「………」
…誰か居る。
視線を上げた先には、どこかで見た事のある車が、私の家の前に横付けされている。
その車にもたれ掛かり、タバコを吸う人物が目に入り、思わず声を上げた。
「慶兄!?」
私の声に反応するように、パッと顔を上げると、ニッコリと優しく微笑み、片手を上げた。
慌てて駆け寄り、目の前までやって来ると、慶兄がのんびりと口を開いた。
「早かったなあ。宗太に連絡したら、来てないって言うからさ」
「え…いつから居たの?」
優しい笑顔で私を見下ろす慶兄に、一瞬ドキンと心臓が跳ねた。
反面、瑠衣斗じゃなくて良かったと、ホッとする自分も居た。
「ついさっきだよ。少しドライブしないか?」