いちご
胸元に顔を押し付けられているせいで、瑠衣斗の低い声が響いて聞こえる。
「…言えよ。俺が約束した事…忘れてんじゃねえよ」
…約束って何?
聞きたいのに、喉が詰まったように声が出ない。
体の震えは、喉にまで伝わり、声を出す事すら億劫になっていた。
何かが込み上げてくるようで、それを必死に押し下げようとするが、徐々に溢れ出しそうになってくる。
「鈍感」
「どっ…かん?」
声を出したいのに、震えてちゃんと出ない。
「強がり」
「ちがっ…」
頭がキューッとして、何かが絞り出されているようだ。
震えは激しくなり、嗚咽のように大きく肩が揺れる。
優しく包み込むように頭を撫でてくれる瑠衣斗の手は、私に魔法をかけてしまったらしい。
ずるいよ…瑠衣斗は。
「泣き虫」