いちご
瑠衣斗の顔を見ていると、今までの雰囲気を思い出しそうになり、慌てて空気を変えようと頭を働かせた。
勘違いしちゃダメ。
期待しちゃダメ……。
こんな時に限って、期待が膨らみ、口から自分の気持ちが出てきそうだ。
雰囲気に流されて、流れで気持ちを伝えるなんてしたくない。
それに、瑠衣斗にとっては何の意味もないキスかもしれないじゃん…。
走り出しそうな気持ちに、慌ててブレーキをかけた。
「え、えっと、るぅ…?」
視線を逸らす瑠衣斗は、チラリと私を見ても、すぐに視線を下に向けてしまう。
だいぶ赤みは引いたようだか、耳の先が赤くて頬も淡く赤い。
「…ん?」
照れ臭そうに応えるが、まだ視線を下げたままだ。
「宗太の所行く予定……じゃなかったの?」
言いながら、あ。と思った私は、さり気なく瑠衣斗の膝から降りようと体を動かした。