いちご
「いや、あ、…すいません」
吃りながらも返事をして、受話器を耳に当てている。
何だか、子供ができてから美春がパワーアップした気がするのは、私だけだろうか。
「うん…え?あぁ、大丈夫。…うん」
淡々と話す瑠衣斗を横目に、だるい体をソファーに預け、ボーッと電源の入っていない正面のテレビを眺めた。
お昼はすごかったな…。まさか二回も泣くなんて思わなかったし、すごい1日だった気がする。
それにしても、あの“りな”と言う子は、大胆だなあ…。
きっと、瑠衣斗の事が好きで大胆になれるんだろう。
私には、大学に乗り込んだり、手を自ら繋いだりなんてできないだろうな。
そう考え、瑠衣斗とのキスを思い出し、恥ずかしさに顔が赤くなっていくのが分かる。
ギャー!!ちょっと!!今は考えちゃダメー!!
勢い良く持っていたマグを傾け、半分程ある少しぬるいぐらいの珈琲を、一気に飲み干した。