いちご


「いや、あ、…すいません」


吃りながらも返事をして、受話器を耳に当てている。



何だか、子供ができてから美春がパワーアップした気がするのは、私だけだろうか。


「うん…え?あぁ、大丈夫。…うん」


淡々と話す瑠衣斗を横目に、だるい体をソファーに預け、ボーッと電源の入っていない正面のテレビを眺めた。



お昼はすごかったな…。まさか二回も泣くなんて思わなかったし、すごい1日だった気がする。



それにしても、あの“りな”と言う子は、大胆だなあ…。

きっと、瑠衣斗の事が好きで大胆になれるんだろう。


私には、大学に乗り込んだり、手を自ら繋いだりなんてできないだろうな。



そう考え、瑠衣斗とのキスを思い出し、恥ずかしさに顔が赤くなっていくのが分かる。



ギャー!!ちょっと!!今は考えちゃダメー!!


勢い良く持っていたマグを傾け、半分程ある少しぬるいぐらいの珈琲を、一気に飲み干した。



< 312 / 503 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop