いちご
「おはよー……大丈…夫?」
携帯が鳴り、急いで玄関から飛び出すと、大きな黒い単車にまたがったまま黒いヘルメットを被った瑠衣斗が、白い顔をしてボーッとしている。
「はよ…大丈夫じゃねえ…」
チラリと私を見て言うと、吐き出すように弱々しい返事が返ってきた。
「二日酔い?寝不足?」
近付きながら声を掛けたが、肩を落として単車に前のめりになって頭を腕に乗せてしまった。
「両方…」
「ありゃま…御愁傷様」
消え入りそうな声を聞きながら、瑠衣斗の手に引っ掛けてある同じ黒のヘルメットを奪い、頭に被った。
「…乗れるか?」
「大丈夫」
俯いたままの瑠衣斗の背中を借りて、ドキドキと鼓動し始めた心音に気を取られながらも、背中に手をついて瑠衣斗の後ろに乗った。
「足届くか?」
「届かない」
すっと体を起こしながら聞く瑠衣斗のヘルメットを、答えながら後ろから叩いてやった。
その瞬間、瑠衣斗は両手で頭を抱え、背中を丸めた。
「……すいません。いやみでした」