いちご


流れるように加速する瑠衣斗の単車は、スムーズに道を進んだ。


車と違って、風を直に感じる事ができて、真下の地面は凄く近くいつもの道と違って見える。


何より、前は思わなかったが、こうして無条件に好きな人にピッタリとくっつく事ができて、思わず腕に力を入れ、背中に顔を埋めた。


目を閉じると、ゴオゴオと鳴る風がスピードの速さを表しているようで、風が気持ち良い。


鼻をかすめる瑠衣斗の、甘くて爽やかな香りを、胸一杯に吸い込んだ。



見上げれば、ヘルメットの下から風に激しく靡く瑠衣斗の襟足の髪が、広い肩と首根を露にして、胸がギュッと高鳴る。


触れた場所から、瑠衣斗の暖かい体温が伝ってきて、固い腹筋に触れる自分の手が、意識があるように恥ずかしい。



恋って、全身が心臓になったみたいに、些細な事にでも敏感に反応してしまう。


切ない疼きが全身を麻痺させてしまうようで、思わず速さを増す単車のせいにして、グッと瑠衣斗にしがみついた。





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