いちご
「もう帰り一人で帰る」
そう言って単車から降りると、ヘルメットを取って瑠衣斗に押し付けた。
恥ずかしくて、絶対に顔が赤いに違いないので、目を合わす事ができない。
笑ってヘルメットを受け取りながら単車から降りた瑠衣斗は、足留めをし、目を逸らし続ける私に向かって手を伸ばしてきた。
「…ん?え!!ちょっと何すんのよーっ!!」
「仕返しじゃ」
笑いながら私の髪をグシャグシャにかき混ぜる瑠衣斗の腕を掴むが、何の抵抗にもならない。
直ぐに手を離してくれたが、楽しそうに笑う瑠衣斗を下から睨み付けた。
「メデューサみてえ」
「るぅはタワシだね。タワシ」
髪を撫で付けながら言うと、タワシ頭の瑠衣斗が斜め掛けのグレーの鞄を掛け直しながら、私の持つ鞄を取った。
「行くか」
「え、タワシで行くの?」
少し歩き出した瑠衣斗に駆け寄り、見上げる私を瑠衣斗は見下ろした。
「ももがセットしてくれた頭でいい」
ニッコリと笑う瑠衣斗は、だいぶ乱れた髪をかきあげながら、ニッコリと笑ってみせた。
「…なんだそれっ」
恥ずかしさでプイッとそっぽを向くと、瑠衣斗がクスクスと笑う声がして、胸がグッとせつなく疼く。