いちご
大学の敷地内でも、一際外れにある駐車場に停めたため、校舎内を目指して歩き出した。
段々と人が増えていき、賑やかな雰囲気に紛れ込む。
チラチラと感じる視線に、どうする事もできず、少し瑠衣斗から遅れるように歩いた。
「もも?体調わりい?」
目の端で、瑠衣斗が足を止めて振り返った事が分かり、顔を上げた。
焦げ茶色の、胸元がザックリ空いた袖口の長めの薄いセーターを着て、細身の黒いパンツにスニーカーを履いた瑠衣斗は、何だかスタイルの良さが際立って見える。
タワシ頭だけど、乱れた髪型は色気すら感じてしまうのは何故だろう。
「ううん。大丈夫」
胸がジリジリと焦げるようで、自分が嫉妬しているんだと気が付く。
付き合っている訳ではないのに、嫉妬なんてする権利なんてないよ。
「…そうか?ほれ、行くぞ?」
そう言って近付くと、私の手を取って歩き出した。
「え!?る、るぅ?」
戸惑う私にお構い無しで、グイグイと引っ張り歩いて行く。
「ん~?」
前を向いたままの瑠衣斗を見上げると、口元に笑みを浮かべた瑠衣斗が目に入り、何だか何も言えなくなってしまった。
本当に調子狂っちゃうよ…。
振りほどく気も起きず、恥ずかしさの反対に胸がぽっと温かくなる感覚がくすぐったい。