いちご
手を繋いだまま、講堂に入ると、いつものように一番窓際に腰を下ろした。
窓側に瑠衣斗が座り、その隣に私が座った形だ。
「ねみぃ。寝る」
大きな欠伸をした瑠衣斗は、本気で寝るようだ。
ポカポカ窓から降り注ぐ暖かな陽射しは、確かに寝るにはピッタリな立地条件だろう。
「…頭いんだから休んでも大丈夫でしょ」
早速机にうつ伏せになってしまった瑠衣斗のタワシ頭を見ながら、ポツリと呟いた。
「…事情があんだよ」
事情…?ひょっとして…“りな”さん??
不安になり、思わず黙り込んでしまった。
胸がモヤモヤと、雨雲のような色をした渦のように、暗く心に影を落としたみたいだ。
「そう…。大変だね」
瑠衣斗から目線を外し、平常心を装って言ったが、顔を見られていないからバレてないだろう。
「もも?どうかしたか?」
「へっ?」
見ると、肘に頬を向けたままの瑠衣斗が、いつの間にか私を見つめていて、変な返事をしてしまった。
「え…いや別…に………るぅ?」
じっと私を見つめていた目が、ふっと私から逸らされ、突然私の背後へと移された。
じっと見つめる瑠衣斗は、徐々に眉間にシワを寄せ、どうしたんだろう?と思い、釣られるように私も瑠衣斗の目線を追い、後ろを振り返った。