いちご
壊想
「名前何て言うの?」
「……もも」
連れられるままに来た場所は、繁華街の中でも中心から少し離れた場所にあるバーだった。
見ず知らずの、たった今初めて会ったばかりの人に付いてくなんて、初めてかもしれない。
間接照明が暖かい雰囲気で、少し暗い店内は、個室のように仕切りがいくつかあり、お洒落な作りだった。
「もも?うちで飼ってるハムスターと同じ名前だ」
「よくそう言う事言われる」
応えて、初めて瑠衣斗に会話をした時の事を思い出した。
あの頃は良かったな…。瑠衣斗とも知り合ったばかりだし、まだ家族も居た。できる事なら、あの頃に戻りたい。
「俺は、夏希。よろしく~」
ニコッと笑った笑顔に、意外と整ってる顔だな~なんて感心してしまった。
「ナツキ…?女の子みたい」
「よく言われます~」
パッと見、ホストのような出で立ちで、でもハッキリとした顔のパーツは、よく見たら結構なイケメンだ。
深い二重の目は、笑うと細くなり、年齢より幼く見えていると思う。