いちご
病室へ入ってきた瑠衣斗は、すぐに一旦立ち止まると、
私、私の頭、慶兄へと目線を移し、また私へ戻ってきた。
「…ただいま」
その場に立ち止まったまま、それだけ言った。
振り返った慶兄は、私の頭に手を乗せたまま「お、早かったな~」なんてのほほんと言っていた。
変にベッドから距離があるもんだから、違和感がある。なんじゃこれ。
私が瑠衣斗を見ていると、ポンポンとまた頭を手が弾んだ。
ん?と見上げると慶兄と目が合った。
「もう20分もすれば点滴も終わる。そしたら帰っていいぞ」
「うん。分かった」
左腕から延びている管の先にある点滴は、確かにあと僅かだ。
一定の間隔で落ちる滴が、自分の体内に入って来ると思うと、何だか不思議な感覚だ。
無心に点滴の滴を見つめていた私に、慶兄は「見てても全然いいけど、横になっとけ」と笑いながら言った。