いちご



「もも泣いただろ」


「え?な、何でっ」


思わず被っていたキャップのツバをつかみ、目線を泳がせてしまう。



やっぱり腫れてるよなぁ~…バレてる。



「どこ行ってたんだよ」



上から降ってくる言葉に、昨日の自分の行動が蘇る。


当てもなく歩き続けて、気が付くと繁華街にいた。


そこで夏希と会ったんだ……………おまけにラブホまで。



言えない!!そんな事言えない!!


「…え?だから…散歩」


「連絡も気付かねえくらい楽しい散歩だったのかよ」



呆れたように、溜め息混じりに言う瑠衣斗の声に、嫌な汗が出てくるようだ。


「あ、その~ずっとマナーにしてたし、携帯見ようとも思わなくて…ね」



もうそれ以上突っ込んでほしくないんだけど…。


手と足が同時に出てしまいそうになりながら瑠衣斗に付いて歩くが、逃げ出したい衝動に駆られる。



そう言えば、メールも着信履歴もちゃんと確認してない。


みんなに連絡しなきゃ。


よそ事を考えだした私に向かって、ポツリと瑠衣斗が囁くように口を開いた。


「……悪かったな」


「………分かったから。もういいよ」



そう応えつつも、いつかまた近い内に“りな”さんと会うことになるだろうと思い、唇を噛み締めた。




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