いちご
「私こそゴメンね?心配かけました」
嫌な思いを振り払うように、明るく振る舞いながら瑠衣斗を見上げた。
色素の薄い瞳を、眩しそうに少し細めたままチラリと私を見て、すぐに正面を向き直った。
流れるようなサラサラの少し長い髪の隙間から、左耳のシルバーのピアスが光に反射してキラキラと輝いている。
その横顔は、やっぱりどこか疲れているようで、胸が締め付けられるような思いだ。
グッと握り締めた手の感触に、手のひらを開いて中を見た。
私は、こんなの貰う資格なんてやっぱりないよ。
無くしたらいけないと思い、鞄から財布を取りだし、中に大事にしまい込んだ。
瑠衣斗の前で、自らキーケースに付ける事が、何だか恥ずかしくて手早く鞄に財布を戻す。
「その…話戻すけど、もも…慶兄…と……え~…っとだな…」
何か言いにくそうに話す瑠衣斗を不思議に思い、真上を見るように瑠衣斗を見上げた。
「慶兄と?何?」
「いや、やっぱ何もねえ」
グッと唇を閉じてしまった瑠衣斗は、本当にもう何も言わないと表したように口を閉じてしまった。
「な…何。気になるじゃん」
「………」
口を閉じてしまった瑠衣斗は、やっぱりチラリと私を見るが、何も言わずに正面を向いてしまう。
意味が分からない…。