いちご


正面に向き直り、ふぅ、と一息ついた。



「あ~ねみい」


隣の瑠衣斗が欠伸をして、そんな事を言っている。


見上げると、目の縁に涙をためた瑠衣斗が瞬きをしていた。



「さっき寝てたぢゃん。てゆーかバスの中でも欠伸ばっかしてたね」


「う~ん。そうだっけ」


「るぅは起きてる時より寝てる事が多い」



どこでも寝てしまう瑠衣斗。ある意味特技だと思う。



「寝る子は育つって言うだろ」

そう言って私を見る瑠衣斗は、何か嫌味な笑顔でムカつく。


私は成長してないとでも言いたいんだろう。



「いつまで成長期やってんの」

「今は思春期だから優しくしろ」


「ふうん」


「へえん」


いつものようにくだらない会話をしつつ、瑠衣斗は運転手さんに指示をした。


どこ行くんだろう?こっちは瑠衣斗のマンションの近くだよなあ。


なんて思いながら何も考えずにタクシーに揺られていた。


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