いちご
「んだよ〜俺に彼女をくれ〜!!」
「…虚しすぎだぞ……龍雅」
確かに…瑠衣斗には女友達なんていない…と言えばいないだろう。
興味のない人間には、深く関わろうともしない性格で、特定の人物にしか笑いもしない。
そんな瑠衣斗が、キスまでする相手なんて…。
龍雅と宗太の声をバックに、思考の渦にどっぷりハマってしまった。
「腹減った…飯適当でいいだろ?」
「………」
「…おいもも、シカトかよ」
「っうえ?」
突然話を振ってきた瑠衣斗に反応なんてできずに、舌を噛みそうになりながら返事をした。
「―…もも最近ポーッとし過ぎ」
「へ?そお…?」
瑠衣斗に視線を向けると、スッと通った鼻筋に、少し白状そうな唇が目に入る。
……私も、あの唇と………。
胸がグッと詰まり、視線を流れる景色へとすぐに戻した。
私も…って何か虚しいな。
両想いでするキスって、何か違うのかな。
その時、手の中で携帯が震えだし、突然の事にビクッと驚いてしまった。
「っ!?…びっくりし…あ、慶兄だ」
「慶兄?」
チラリと視線を向けた瑠衣斗は、直ぐに前を向き直って運転を続けている。
慌てて通話ボタンを押し、携帯を耳に押し当てた。
「もしもし?慶に?」
『…悪い。連絡できなくて』
声がとても疲れたようで、胸がグッとした。
ダイレクトに伝わる慶兄の低い声に、顔が熱を持っていくようだ。
大変だったのかな…寝てないのかな?
「大丈夫だよ。るぅが病院に確認してくれたから」
『そおか…ゴメンな。ちょっと手が放せなくて』
言い訳ぐらいしてもいいのに。
なんて思えてしまうくらい、慶兄はどんなに疲れていても愚痴すら言わない。
すごいなぁ…慶兄は。
『今夜…ウチに来ないか』
「……今…夜?」