いちご



「ほれ、これ付けて」


タオルでグルグルにされた、ハチマキのような物を持ってきた慶兄は、私の前で屈んで私を見上げた。


上目遣いの慶兄に、思わずドキリとした。


「ありがとう…ゴメンね」



受け取ろうとすると、おもむろに慶兄が立ち上がり、私の隣へ腰を下ろした。


「付けてやるよ。後ろ向いて?」


素直に従い、軽く頷いて背中を向けた。



「つ!!めた…いけど気持ちぃ……」


熱を持った額に、とても気持ちが良く、ふぅと肩の力を抜いた。



「俺の家、薬とか氷枕とかねぇからさあ…タオルで氷巻いてきただけなんだけどゴメンな」


手際よく後ろで縛ってもらい、慶兄がそんなことを言っている。


「そんな全然いいよ!!私が勝手にたん…こぶ作っただけだし」

「くっ…ま、まさか…あそこでそうなるとは予想もしねぇよ」


何となく、タオルを巻かれた姿も見せづらく、背中を向けたまま俯いた。


「もぉ〜忘れてよ…」



体操座りをして、膝を抱え込むようにして額を腕に乗せて俯いた。


額に巻かれたタオルがクッションになり、同時に腕をひんやりと冷やしていく。



ホントに最悪だぁ…穴があったら入りたい……。


「ももちゃん」


「………っえ!?」


「あんなとこでお預けされるとはなぁ〜」



軽くソファーが沈んだと思ったら、慶兄に後ろ抱きされ、ビクッと体が跳ねた。


私の左肩に顎を乗せた慶兄の吐息が、首にかかるたびに背筋が甘く痺れる。


「お…お、預け…とか、い、言わないでよ…」


「じゃあ…続きする?」



チュッと耳にキスをされ、思わず背筋を伸ばした。


「ひゃ、え、…っ慶兄ぃ〜」



何て答えたらいいのかも分からず、再び腕に顔を埋めた。


がっちりと後ろから足に挟まれ、滑らかな腕が優しく私を包み込んでいる。
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