いちご
「どうした?おいで?」
片手で引き寄せられ、隣に座らせられた。
素直に従い、ちょこんと隣に腰掛けると、手際よく慶兄がタオルを外してくれた。
「ん〜…ちょっと青くなってんなあ。でも腫れは少し引いたな」
「取ってもいい?」
顔をのぞき込むようにして私を見つめると、慶兄は軽くため息を吐いて視線を落とした。
「分かったよ…ももが大丈夫ならいい」
「うん。大丈夫」
それでもやっぱりたんこぶを見られるのは恥ずかしくて、両手で前髪を整えた。
「んじゃちょっと置いてくるな。…あ、着替えは?」
立ち上がると、思い出したように私を振り返る慶兄に、動きを止めた。
「…忘れちゃった」
「んじゃ、俺の貸すよ。ちょっと待ってろよ」
そう言い残して寝室を出た慶兄に、軽く息を吐いた。
これ以上ドジしないように気を付けよう…………てゆーか着替え…どこで…。
……………大変だ。
ど、どうしよ!?まさか目の前で着替えるの?てか、慶兄も着替えるんだよねぇ?えっ!?ちょっと本気でどうしよう!?こんな明るい場所で!?ねぇ、ちょっと!!ちょっとどうしよう!!ちょっと………!?
「……どうした」
「へっ!?…か、顔のま、マッサージだよ……」
両手で頬を抑えて、思い切り眉間にシワを寄せていたであろう私は、慌てて言い訳にもならない事を口走っていた。
「ふうん?色々忙しいなあ」
笑いを含めた慶兄は、そのままクローゼットへ向かい、スウェットとTシャツらしき物を二人分取り出し、ベッドまで戻ってきた。
「ありがと…」
「お」
そのままワンセットを私に手渡すと、残りをベッドへと投げ出し、慶兄は躊躇する事もなく堂々とシャツを脱いでしまった。
「………!!」
見た目よりもガッチリとした体に、思い切り目を逸らした。
初めて見る慶兄の体に、一瞬見とれてしまいそうになり、慌てて逆を向いた。
「…何だよ。んな照れるなって」
「てっ!!照れるよぉ!!」