いちご



顔を向ける事ができずに、ひたすら俯いた。


明るい場所で、しかも初めて間近で見た慶兄の裸が、目に焼き付いたようで離れない。



「着替えねぇのか?」



後ろから聞こえてきた慶兄の言葉に、喉が詰まる。


ま、まじで!?ここで?目の前で!?



頭の中が混乱して、どうすればいいのか分からない。


背後から服の擦れる音がして、慶兄が着替えを済ませている音に、冷や汗が吹き出しそうになる。


「だから、そんな照れるなよ。いじめたくなるだろう?」


ベッドが傾いたと思ったら、着替えの済んでしまった慶兄が隣に腰を下ろして私を覗き込み、反射的にビクッと驚いてしまった。


「い、いじめっ!?や、あの〜…向こうで着替えてきても……」


もじもじと答えるしかなく、目を泳がせた。


「手伝ってやろうか?」



耳元で囁かれ、ついに私は固まってしまった。


「い、い、いい!!だ、大丈夫っ」


ズルズルと慶兄から離れるように横へ移動すると、慶兄がニコニコしながら距離を縮めてくる。


慶兄ってこんなキャラだったっけ!?


と、あわあわと逃げるが、すぐに行き止まりにぶち当たる。



「遠慮するな。手伝ってやるよ」
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