いちご
逃げる場所がなくなり、今度はベッドに乗り上げ、そそくさと後ずさった。
「だ、大丈夫だからっ、ホント」
「またどっかぶつけたりするなよ」
ジリジリと距離を縮める慶兄まで、ベッドに乗り上げている。
気が付くと背中がぶち当たり、もう後退りできなくなってしまい、軽く確認するように後ろを振り返った。
「な…んでそんなに近づくの」
「ん?手伝いたいから」
スッと延びてきた慶兄の手に、思わず目を固く閉じた。
「そんな怖がるなよ…さすがにいきなり脱がしたりしないよ」
そう言って優しく頬を撫でた慶兄に、そっと目を向けた。
色素の薄い瞳に、私の戸惑った顔が写り込んでいて、思わず目を逸らしてしまう。
何でそんなに余裕なの?こんなに私はドキドキしっぱなしなのに!!
全身に血液が急ピッチで運ばれているようで、胸の鼓動が速い。
そっと触れていた慶兄の手に力が入り、そのまま顔を上げられ、自然と慶兄の視線とぶつかる。
しんとした部屋が、身にしみるようだ。
時間が止まったようにすら感じられ、思わず慶兄を見つめ返した。
何だか真剣な表情の慶兄の顔が、そっと私に近付き、ゆっくりと目を閉じた。
びっしりと睫毛の生え揃った瞳が、ゆっくりと閉じられるのを間近で見て、胸がグッと疼く。
それが合図のように、私も自然と目を閉じて慶兄の唇を受け止めていた。