夢のウエディング イン イタリー
その週の土曜日、美和はスポンジケーキを焼いていた。

「膨らみますように」

と心配そうにオーブンを覗く美和に母が

「大丈夫よ。いつも通り、作ったんでしょう?」

「そうだけど・・・」

チン!焼き上がりの音。ミトンで天板を取り出して。

「よかった。上出来!」

「明日は、拡嗣くんが来るのよね?」

「うん、だから、ケーキも焼いてるんじゃない」

「日程、うまく合うといいけど」

「まぁ、どうにかなるでしょ!」

父は、長年勤めていた〇〇〇印刷株式会社から出向して子会社で働いている。基本、土日が休みだ。拡嗣の父は、実質退職しているらしい。

そして、日曜の午後、拡博がやってきた。事前に拡嗣は、手土産不要と言われていたので、今回は手ぶらだ。

紅茶が入るのも待たず、父が聞く。

「どうなんですか。やっぱり、6月くらいなら、安いチケットで来れるんですか?」

「はい。最安値ではないですが、かなり安く来れます。半ばくらいでどうですか?」

「6月21日はどうですか?」

「大丈夫だと思いますが・・・今、ちょっと、確認とりますね」

と言って、実家に電話。OKが出た。

ほっとして、みんなで紅茶とケーキを食べた。美和特製の、とっておきのショートケーキだ。

驚いたことに、拡嗣は、8等分したケーキを3つたいらげていた。

「いや、甘さがちょうどよくておいしくて」

美和はある程度の免疫があったが、両親にとっては、本当に驚きのようだった。

「今日は、コージくんと、プロデュース会社の検討をするから、部屋に行くね」

「いいわよ」

「じゃあ、コージくん、あたしの部屋に、海外版 ゼクシィあるから、一緒に見よ」

「うん」

と言って、2回の美和の部屋に行った。

「へぇ・・・意外と、これだけじゃ、よく分からないもんだね」

拡嗣が言う。旅行会社とドレス会社の広告がほとんど、そして、ほとんどの特集が、ハワイ、グアムだ。ハワイやグアムなら、家族でのウエディングも難しくはないからだろう。

「うん・・・ちょっと困っちゃってる。この、〇〇ベウエディングと、J〇〇南青山ウエディング〇〇〇って言うのと・・・一番気になるのが、この南青山のヨーロッパウエディング専門のリージェンシーグループ株式会社かな」

「じゃあ、来週の土曜に〇〇ベに行って、日曜日に南青山の2軒に行こうか」

「大丈夫?そんなに休める?」

「どうにかするよ」

そのあと、2人で新宿で食事をし、散歩をして、美和が家に帰ったのは10時半ごろだった。
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