夢のウエディング イン イタリー
2007年1月現在、美和は勤めを辞め、通訳案内士の試験に向けて勉強していた。・・・と言っても、学校は、週に2回。バイトをしてもいいかな、と思っていたが、美和はそこまで器用ではなかった。

拡嗣のほうは、平塚にある、化学酸化物を作る企業に勤めていた。仕事の方はそれなりに忙しいようだったが、美和とは遅くなっても毎日メールをしてくれている彼女想いの男だった。

そんな2人の出会いは、いわゆる「出会い系サイト」だった。何人かの男性とやり取りする中、拡嗣に、真摯な優しさを見つけた美和。2ヶ月くらい連絡がなく、3月15日の誕生日にメールをもらったときは運命だと思った。4月3日の初対面で、美和は拡嗣に一目惚れ。拡嗣もまんざらでもなかったらしい。その年の5月15日、「美和さん、つきあおう」と、言って、初めて手を繋いで。翌週、駅のホームで初めてのキス。つきあいは、おおむね順調だった。

あっというまに、翌週の日曜日。東中野の駅に2時。美和が拡嗣を迎えに行った。

「コージくん、表情硬い!リラックス、リラックス!」

「そりゃ、緊張するっしょ~。お嬢さんをください、って言いに行くんだよ」

「まぁねぇ。こっち。商店街をまっすぐ」

5分ほどで美和の家に着いた。

「あぁ、いらっしゃい、コージくん。上がってください」

美和の父がにこやかに言う。

「これ・・・お土産です。どうぞ」

「ありがとう」

テーブルについて、美和の母が紅茶を淹れる。

「コージくん、コーヒー飲めないんですってね」

美和の母が問う。

「はぁ。苦いのが苦手で。紅茶は、大丈夫です」

「よかったわ」

「コージくんは、ご実家は別府だって?いいところだね」

「温泉だけは・・・豊富にあります」

「で・・・あの。美和さんを・・・」

美和の父が後をつぐ。

「結婚させてくれ、っていうんだろ?それは構わないよ。ただ・・・返却不可だから、そのところは分かってくれるな?」

「幸せにします・・・絶対離れません」

「じゃあ、僕らが言うことは何もないよ。2人でいろいろ決めるといい」

「あのね、パパ」

美和が口をはさむ。

「結婚式は、イタリアでしたいの。コージくんと2人っきりで。いいかな」

「あとで、親せきに挨拶するのなら、それは構わないよ」

「ありがとう」

「美和ちゃん、イタリア旅行の時のカップルのこと、まだ覚えてたのね」

美和の母が言う。

「バレたか」

美和が、舌をだして笑う。

一同、大笑いする。

あっという間に歓談の時間は過ぎ、拡嗣は帰ることに。

「ママ、パパ、コージくんと夕食食べてきていい?」

「ゆっくりしてきなさい」

「ありがとう」

2人はほっとしながら、美和の家を後にした。
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