僕の背後にナリスマシ
妙高のパソコンはセキュリティソフトの終了期限が近づいていた。 ソフトを購入するためにパソコンショップに行き、説明を受けるためにテーブルに座り担当者と話した。 一通りの説明を終えると妙高は言った。
「最近思うんですけど携帯やパソコンは簡単に覗けるものなんですか。」
「 サーバーにアクセスできる人間なら簡単です。」
「詳しいですね。」
「僕、ハードポストのシステムエンジニアだったんです。」
ショップのスタッフは携帯電話会社ハードポストの元社員だった。
「実際のところどうなんですか。スタッフが個人の携帯を覗くとか。」
「一部の人間は平気でやってます。この業界にいたら パソコンや携帯に入力した時点で、誰かに見られないことはないとつくづく思います。」
スタッフはいとも簡単に答える。
「やっぱりそうですか。 それと警察のサイバー犯罪対策課がやっているサイバーパトロールというのはどうなんですか。」
妙高が質問を続けるとこれにもスタッフは簡単に答えた。
「 実は僕、そのアシストをしていたんですよ 。お客様はどこの携帯をお使いですか。」
妙高はこの機会に色々と尋ねてみることにした。
「ヒーローを使ってます。」
妙高がそう言うとスタッフはなるほどといった表情を浮かべて話し始めた。
「少し前までヒーローの携帯はショップから簡単にアクセスできたんです。 綺麗な女の子が来店したからと、彼女の携帯の中の画像を1000枚以上自分のパソコンに保管したスタッフもいました 。それで警察に逮捕されてます。でもあまり報道されてません。報道したのはテレビ局がNKH、あと記事にしたのは週刊潮流ぐらいです。 テレビ局やのスタッフや雑誌の記者が金を渡して情報をもらっているんです。もちろん携帯電話会社のスタッフもいいアルバイトだと個人情報をこっそり売ってます。マスコミの場合はフリーのライターに、携帯ショップの場合はフランチャイズにそういった人間が多いみたいです。 いわゆる業界のグレーゾーンというやつですね。」
妙高は試験問題の答えを知った気分だ 。
「つまりは僕の携帯を覗きたいやつがショップに行って、スタッフと合意したら商談成立というわけですか。あとは簡単に覗けるということ。」
「そうなります。」
妙高には心当たりがあった。
「実は時々、携帯の画面が変な風に動くんでショップに持っていったら店長に言われたんです。〈それはお客様が自分で操作しているからです。〉ありえないですね。指を触れていないんですから。超能力か何かを使わない限り。」
「それは間違いなく覗かれてますね。」
スタッフも納得した表情で答えた。
「もっと言わせてもらうと携帯がそんな動きを始めた頃から、友達とメールのやり取りをすると内容が夕方のラジオで流れるんです。」
「そういうことですか。たぶんショップのスタッフのアルバイトでしょう。地元のラジオはそうやってネタ集めしてます。僕は関わりたくないし、これから先は個人情報の管理が厳しくなるから後々面倒になります。」
スタッフは他人の携帯を覗くのはあまり気持ちのいいものではない、そういった表情をしている。
「そうなんですか。あと家の中での会話が結構ラジオで流れるんです。」
妙高は探るような感じでしゃべった。
「それは不思議でないです。今は至る所に盗聴器ありますから。おそらく、あちこちに盗聴器つけられてると思います。」
「それで僕の作曲した曲のサビの部分がラジオで流れたりするんですね。」
「どんな曲ですか。」
スタッフに尋ねられた妙高は携帯で地元のPRソングを検索して聴かせた。スタッフは興味深そうにクレジットのところを指差して言った。
「この曲の提供者は犯罪だと自覚してるんじゃないですか。クレジットが入ってません。 この曲、複数のラジオ番組で流れているということはかなりの数のスタッフが盗聴した盗作だと知っているわけです。誰かが密告こんだらまずいからでしょう。」
「どうして一言言わないんでしょう。」
「 聞いたところによるとこのDJは自己顕示欲の強い目立ちたがり屋の人間みたいです。」
「では携帯が覗かれているという前提で質問します。友人とのメールのやり取りで、自分たちの会話と同じ内容が流れるラジオ番組のDJをボロカス言ったり不適切な表現でけなしたら犯罪ですか。」
「それはないでしょう。公の場ではありませんから。」
「少しずつ試してみます。今日は貴重なお話をありがとうございました。」
妙高はそう言ってショップを出たが、あのスタッフも過去に結構やっていたのかなという思いはぬぐえなかった。そうだとしたら、引き際うまいやつだと。
妙高は 車に乗り込むと周治に電話をかけた。
「最近思うんですけど携帯やパソコンは簡単に覗けるものなんですか。」
「 サーバーにアクセスできる人間なら簡単です。」
「詳しいですね。」
「僕、ハードポストのシステムエンジニアだったんです。」
ショップのスタッフは携帯電話会社ハードポストの元社員だった。
「実際のところどうなんですか。スタッフが個人の携帯を覗くとか。」
「一部の人間は平気でやってます。この業界にいたら パソコンや携帯に入力した時点で、誰かに見られないことはないとつくづく思います。」
スタッフはいとも簡単に答える。
「やっぱりそうですか。 それと警察のサイバー犯罪対策課がやっているサイバーパトロールというのはどうなんですか。」
妙高が質問を続けるとこれにもスタッフは簡単に答えた。
「 実は僕、そのアシストをしていたんですよ 。お客様はどこの携帯をお使いですか。」
妙高はこの機会に色々と尋ねてみることにした。
「ヒーローを使ってます。」
妙高がそう言うとスタッフはなるほどといった表情を浮かべて話し始めた。
「少し前までヒーローの携帯はショップから簡単にアクセスできたんです。 綺麗な女の子が来店したからと、彼女の携帯の中の画像を1000枚以上自分のパソコンに保管したスタッフもいました 。それで警察に逮捕されてます。でもあまり報道されてません。報道したのはテレビ局がNKH、あと記事にしたのは週刊潮流ぐらいです。 テレビ局やのスタッフや雑誌の記者が金を渡して情報をもらっているんです。もちろん携帯電話会社のスタッフもいいアルバイトだと個人情報をこっそり売ってます。マスコミの場合はフリーのライターに、携帯ショップの場合はフランチャイズにそういった人間が多いみたいです。 いわゆる業界のグレーゾーンというやつですね。」
妙高は試験問題の答えを知った気分だ 。
「つまりは僕の携帯を覗きたいやつがショップに行って、スタッフと合意したら商談成立というわけですか。あとは簡単に覗けるということ。」
「そうなります。」
妙高には心当たりがあった。
「実は時々、携帯の画面が変な風に動くんでショップに持っていったら店長に言われたんです。〈それはお客様が自分で操作しているからです。〉ありえないですね。指を触れていないんですから。超能力か何かを使わない限り。」
「それは間違いなく覗かれてますね。」
スタッフも納得した表情で答えた。
「もっと言わせてもらうと携帯がそんな動きを始めた頃から、友達とメールのやり取りをすると内容が夕方のラジオで流れるんです。」
「そういうことですか。たぶんショップのスタッフのアルバイトでしょう。地元のラジオはそうやってネタ集めしてます。僕は関わりたくないし、これから先は個人情報の管理が厳しくなるから後々面倒になります。」
スタッフは他人の携帯を覗くのはあまり気持ちのいいものではない、そういった表情をしている。
「そうなんですか。あと家の中での会話が結構ラジオで流れるんです。」
妙高は探るような感じでしゃべった。
「それは不思議でないです。今は至る所に盗聴器ありますから。おそらく、あちこちに盗聴器つけられてると思います。」
「それで僕の作曲した曲のサビの部分がラジオで流れたりするんですね。」
「どんな曲ですか。」
スタッフに尋ねられた妙高は携帯で地元のPRソングを検索して聴かせた。スタッフは興味深そうにクレジットのところを指差して言った。
「この曲の提供者は犯罪だと自覚してるんじゃないですか。クレジットが入ってません。 この曲、複数のラジオ番組で流れているということはかなりの数のスタッフが盗聴した盗作だと知っているわけです。誰かが密告こんだらまずいからでしょう。」
「どうして一言言わないんでしょう。」
「 聞いたところによるとこのDJは自己顕示欲の強い目立ちたがり屋の人間みたいです。」
「では携帯が覗かれているという前提で質問します。友人とのメールのやり取りで、自分たちの会話と同じ内容が流れるラジオ番組のDJをボロカス言ったり不適切な表現でけなしたら犯罪ですか。」
「それはないでしょう。公の場ではありませんから。」
「少しずつ試してみます。今日は貴重なお話をありがとうございました。」
妙高はそう言ってショップを出たが、あのスタッフも過去に結構やっていたのかなという思いはぬぐえなかった。そうだとしたら、引き際うまいやつだと。
妙高は 車に乗り込むと周治に電話をかけた。