僕の背後にナリスマシ
 妙高はラジオを聴いている。そして今日もそうだ。自分が森山周治に送信した内容と同じ事をDJは喋っている。またパクリかと妙高はラジオを切った。
 最近は聴いていて疲れる。時間の無駄と思うようになった。 自分が書いた内容をラジオで聴いて面白い訳がない。

「ラジオ聴いてっか。出たぞ、色天狗。」
 周治から電話が掛かって来た。
「聴いてねぇよ。どうせオマエに送った文章と同じだろ。」
 妙高はどうでもいいよと言わんばかりの返事をする。
「いいから点けろ。面白(おもしれ)ぇこと考えたぞ。早く点けろよ。」
「なんだよ。」
 またラジオを聴くのかと 車のラジオをオンにした。
「この番組の二人デキてるみたいだぜ。」
 妙高にしてみればラジオより周治の話の方が断然面白い。無理に点けなくてもいいのだが取り敢えずラジオを聴く。
「部屋で一発やってスタジオ入りしたんじゃねぇの。」
 周治は結構過激なことを言い始めた。

〔なんでこの人たちウソばっかり言うんですかね。〕女のDJが凄い剣幕で喋っている。男のDJは〔えへへ。〕と笑っているだけだ。

「俺んとこかオマエんとこに盗聴器がありそうだろ。」
 電話口で周治が大笑いしている。
「この感じだと女は知らなそうだな。関係は否定してっけど事実は解んね。」
 妙高は両方の車に盗聴器があるのではないかと疑った。
「まぁ決まりじゃねぇか。男はカミさんと子供居っけどな。カミさんからは三行半みてぇだし女は三十半ばの独身。最近流行(はや)りの不倫だろ。」
「不倫は流行りじゃねだろ。不倫ブレイクが流行りなんじゃねーの。不倫の画像拡散で売れない連中が 回数を稼ぐってやつ。」
 妙高がそう言うと周治はまた大笑いをしている。ラジオにコマーシャルになった。おそらく両方の車に盗聴器が仕掛けられているのは あるのは間違いない。
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