僕の背後にナリスマシ
 盗聴器が取り付けられたのではと思われる当たりにから少し様子が変わってきた。妙高と周治は帰宅中に頻繁にパトカーと遭遇するようになった。 その遭遇が普通ではない。いつも同じ交差点でその交差点に来るのを待ち構えているかのようにである。直線ですれ違う時などは突然パトカーが赤色灯を点ける。狙い済ませたように。

 周治は携帯でノゾクンジャーの犬が現れたと笑ってはいるが、妙高はあまり気持ちのいいものではなかった。おそらく周治も同じ気持ちだろう。

 その夜パソコンで小説を書いていた妙高は警察が行動確認(こうかく)を取る理由がうっすらと分かってきた。
 妙高のペンネームは赤井西瓜(あかいすいか)である。そして妙高が周治に送った文章を まるごと投稿もしくはさらに過激な言葉を付け加えて投稿する人物が現れた。その人物のハンドルネームは赤井酢蛸(あかいすだこ)

 妙高が周治に連絡すると返事が返ってきた。〈敵さん考えたな。タコとイカか。それにしても盗聴変態ノゾクンジャーには相当カチンときたみたいだぞ。 でも少し厄介だな。マスコミが情報操作をしてお前が政治的な書き込みをしてるような文章もあるぞ。〉
 確かにそうだ。ネット上で赤井西瓜と赤井酢蛸は同一人物とみなされ悪役にされている。相手は人間ではない。業界人という新種の妖怪〈ナリスマシ〉だ。
< 6 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop