満月の夜異世界へと繋がりました
いつの間にか地下にある石畳の牢にあたしはいた
王子に秘薬を飲ませるとなんだか力が抜けたようになりそのまま立てなくなったのだ
あたし、どうしてこんなところに…


そうだ、王子の意識が戻らないのはお前のせいだって言われて…
国に仇なす謀反人だって…
あたしのせいで王子は意識不明になったんだ、どうしよう
どうすれば王子の意識が戻るの?

「ほら、食事だよ」


「あ、ありがとう」


気が付けば牢屋の格子越しにお婆さんがひとり立っている
決して綺麗とは言い難い木綿のワンピースを着た彼女は白髪混じりの髪をひとつにして無造作にまとめていた。光の加減なのか私には彼女の顔色が酷く悪そうに思えてならない
バスケットに入った紙に包まれている固そうなパンを掴むとあたしのほうに向け突然放り投げた


「新入り!今日はこれで最後の食事だから残すんじゃないよ!」


「あ、あの!ちょっと聞きたいことがあるんですけどいいですか?」


「なんだい?あたしは忙しいんだ、早くしな」


「王子は、王子様がどうなったか知りませんか?意識は戻ったかどうか知りませんか?」


「はあ?王子様なんて雲の上の人のことなんざあたしのような者が知る訳がないだろ」


「そう…ですか」

素っ気なくあしらわれがっかり感が半端ない
それよりも王子はどうなったんだろ
意識は戻ったかな?
どうか何事もなく無事でありますように


「もしかしてあんたかい?王子様を誑かした悪女は!」


あ、悪女?!
あ、あたしが!?
信じられない言葉を浴びせられそのまましばし固まってしまう
牢屋の石畳がより一層冷たく感じられただ肩を震わせるしかなかった













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