満月の夜異世界へと繋がりました
「いや~こんなにも城内で疫病が流行ってるってのにこの牢の中だけは平穏無事ってある意味あり得ないよな?」


「あり得ないことだけどそれもこれも
美結様の魔法のお陰だよ!!」


「え、それは違うよ!!皆んなの協力のお陰だよ、あたしの魔力なんておまけに過ぎないし!」


この牢に来て早3週間
門番の彼の病気を治して以来、この牢の中も随分変わったように思う
まず私達の1日は日本の刑務所のように規則正しく何時に起きてこれをするということがない
1日2個のパンと門番のジェフリーとラッシュのふたりが時おり差しいれしてくれる果物やお菓子、ス−プが
私達の命を繋いでいる
でもあたしがもっとも苦痛なのは食べることと寝ること以外することがないこと
刑が確定するまでの短い間だからってことらしいけどこんなにも長く牢に入れられるのは異例中の異例みたい
その訳はまず城の中で流行りだした疫病が原因らしい
城中で流行りだした疫病はあっという間に人々にまん延し医師も魔術師も総動員で対策をとっているんだが
終息には程遠く王様始め王族全員離宮に避難することが決定したんだとか·····
要は疫病に掛かり切りで牢の中の囚人のことまで気が回らないってのが
本当のとこみたい
でも高熱に倦怠感、赤い発疹ってこれもしかして麻疹だったりする?


「あ、あのさ······」


「えっ!!あ、な、何?ごめんごめん!ちょっと考えごとしてた~」


「ごめんな·····悪かったよ」


「エリーさん····」



「エリーさんなんて柄じゃないからエリーでいいよ!命の恩人の為ならあたいの出来ることなら何でもするから遠慮なく言ってくれよ!!」



エリーさんの言葉が妙に心に染みる
多分次々感染する中皆んなの看病はあたしがしたからかな?
まあ、もちろん皆んなの助けがあってこそだけど。


でも気になるのは王子のこと
今すぐでも会いに行きたいけどここから当分出られそうにないし·····
せめてこの牢の中でしている感染対策でもしてくれたら少しは安心なんだけどこのことを王子に伝えられたら少しは感染も抑えられるかも



伝えられないかな?手紙で伝える?
どうしよう!!そもそも囚人の書いた手紙なんて王子に届くのかな
あたしはぐるぐる考えを巡らせると小さな窓に見える空を見つめていた



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