満月の夜異世界へと繋がりました
「美結、川の水に手の平をかざして
ゆっくりと魔力を注いでみて」


「え、ここの水に魔力を?」


「集中して身体の中から魔力を水に流し込む感じだよ」


あたしはミクルの言葉を受け川に向けて魔力を流し込んだ
言葉で言うのは簡単だけどこれはなかなか難しいかな
ミクルも自分の感覚を言葉に出して他者に伝えるってなかなか難しいと思う
出来るかな?


じわじわと暖かな魔力が手全体に集まりはじめるとゆっくり金色の光を放つ
その金色の光はあっと言う間に広がって川全体を覆いつくした
魔力が満ちるのと同時に川はゆっくり水嵩を増していく


すると護衛の騎士さん達から歓声が上がった


「す····凄い!!」
「水!!!水だぞやったーーーー!」
「美結様ーーーー!!!」


み、水が····
川が····これって····


「み、美結!!大丈夫か!」


身体の力が抜け崩れ落ちそうになるところを王子が抱きとめた

「大丈夫·····」
「大丈夫ではなさそうだ俺に掴まれ」
「ひゃっ!!」


王子は突然姫抱っこをしたのだ
驚いて変な声でちゃったし

「とりあえず一旦城へ帰るぞ、美結にはその他もろもろ聞きたいことが山ほどあるが全ては帰ってからだな視察はまた日を改めて来ることにしよう」


王子の鶴の一声で撤収が決まる
あたしは川に佇むミクルに向かって手を振ると気になっていたことを問いかけた


「ミクル!!助けてくれてありがとう
でも何で助けてくれたの?」


「僕は美結が気に入ったから助けたんだよ、そこの王子やリルモンド帝国を助けたワケじゃない」
「ミクル·····」
「僕に会いたい時はいつでも名前を呼んで!美結の元にすぐ会いにいくよ」


ミクルはそう言葉を放つとすうっと空の彼方へと消えて行く
わたしは空を見上げながら心に満ち溢れる不思議な思いにドキドキが止まらなかった
だが一連の出来事を一部始終見ていたものが居たなんて思いもしない


「賢人様····これはいったい「水の精霊の加護ねぇ·····これはちょっと検討の余地ありだね」


そう呟いて立ち去る人物が居たことを
知る由もなくあたしは川に水が戻ったことをただ無邪気に喜んでいた







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