満月の夜異世界へと繋がりました
「どうしました?大丈夫ですか」

倒れた馬車に駆け寄ると窓から中を覗き込んだ
本来なら勝手に人様の馬車を覗き込むなどマナー違反だと思う
だけど、そんなこと言ってはいられない
今は緊急事態、許してもらえるよね?

「すみません!扉開けますね」
「美結!「大丈夫、ここから開けられるかなり無理な体制だけど」

当然のことだけど倒れている馬車だから片側からしか開けられない
あたしは馬車によじ登って扉を開けるとひとりの男性の姿が見えた
見たところ重大なけがはなさそうだけど・・・・

「美結!無茶をするな、お前たち中の人を外に出せ」

王子の一言で騎士たちが数人で中の人物を外へと助け出した
男性4人がかりでだったからかなり大変だった
年配の白髪交じりの男性は額から少し出血しているみたいだけどその他に外傷はないみたい
でももし頭を打ってたら?当然この世界にはレントゲンもないしCTスキャンもない
魔法で悪い場所を見れたらいいのに・・・・・
もし出来たら確実に治せる
もしかしてあたしに出来ないだろうか?
魔力で悪いところを探せる?やるだけやってみる?
どうすれば?魔力を注げばいいのかな
あたしは咄嗟にレントゲンのような感じを思い浮かべながら身体全体に魔力を注いだ


幸い額を切った以外は悪いところはなさそうだ
でもこれはかなり深そう、日本だったら麻酔をして縫うところなんだろうけど
ここは治癒魔法を施すしかない
あたしはゆっくりと男性に魔力を注いだ


「美結・・・・大丈夫か?」
「うん、大丈夫・・・・もう一人御者の人も見てくるから」

あたしは倒れたままの御者の男性に駆け寄り再び魔力を注ぐ
レントゲンのイメージで・・・・見えろ 見えろ 見える!!
肩のあたりが黒ずんでいるように見えた
他の部分もレントゲンのイメージで・・・・

「他は異常なしだね」
「美結?何をしている?」
「あ、王子・・・・あのね魔法で身体全体を見ていたの!悪いところがないかどうか」
「・・・・・は?魔法で身体をか?」
「うん、たぶんこの御者の男性は肩のあたりが骨折しているかも・・・・すぐ治すね」

ゆっくりと魔力を注ぐと痛みに歪んでいた男性の顔が表情が変わっていく
あたしは男性の意識が自分に向けられると彼はぽつりと呟いた

「え・・・あなたは?俺はどうして」


訳を聞くと馬車に乗ってる人はお医者様で急患が出たので急いでいたらしい
急に横切って来た猫に驚いた馬が暴れて馬車が倒れてしまったんだとか
・・・・ん?急患?

「待って、急患って?他にも患者さんがいるってことは・・・・」
「お嬢さんありがとうなんとお礼をいっていいか・・・わたしは幸い軽傷です、お願いですから馬を貸していただけないだろうか?患者が待っているのです」

馬車に乗っていた男性が立ち上がるとあたしに視線を向けてきた
王子は護衛の騎士が乗っている馬を黙って差し出す
すると男性は意外なことを言い出した

「お嬢さん、治癒魔法を使えるとは稀有な存在だ・・・どうか一緒に来てはいただけないだろうか、あなたなら彼女を治せるかもしれない」

こう言われて断れるひとがいるだろうか
断り切れずに治療したあたしに意外な顛末が待ち受けていたなんてこの時は知り由もなくただ治したい・・・・その思いだけに突き動かされていた








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