満月の夜異世界へと繋がりました
「お待ちくださいオリバー王子!」

国王陛下の寝所に入ると背後から声が聞こえた
男の人の声、傍らに先ほどの魔法師さんとその上司?
同じような黒いローブを羽織っているけれどこちらの男性は胸に紋章がついている
目の前の背の高い中年男性は明らかにオーラが違う
偉い人なんだろうなって言われなくてもわかる
王子に一礼をするとちらりとあたしに視線を向けた後ゆっくりと話し出した

「なんだ、長官ではないかそんなに慌ててどうした」

「いえ・・・一言申し上げたく参上いたしました今お聞きしたところ陛下の治療にそちらのお嬢様がなさるとか」

「それがどうした?「いけません!!なんの実績もない人物に陛下の治療をまかせるなど」

「わたしが補佐すると申したであろう、責任はわたしがとる」

王子はそう答えると寝所に入っていく
陛下が寝ている寝所は奥まったところにあり天蓋付きのベットに寝かせられていた
調度品や花瓶、本棚などどれをとってもお高そうでお値打ちものだとわかる
天井にはこれまた素晴らしい絵画のような天使の絵が描かれていておのぼりさんのようにキョロキョロしてしまった
あ、いけない・・・あたしは治癒魔法をするために来たんだった
しっかりしなきゃ!深呼吸をひとつすると手を繋いだままの王子と目があった

「大丈夫か?身体が辛いのならやめてもいいのだぞ」

王子の言葉に首を横に振った
あたしは苦しそうにうめく陛下を見つめるとベットの傍へと近づいた

「息が苦しそうでさきほどから呼吸も辛そうなのです、オリバー王子様どうか助けてください!!もうどうしたらいいのか」

お世話係であろう侍女さんが王子の姿を見つけるや否や泣き出しそうな声を出して王子に訴えてきた

「わかった・・・・今からこちらの者が治癒魔法をしてみるから集中する為にも席を外してくれぬか」

「は、はい・・・・では失礼いたします」

お世話係の彼女が出ていくと王子は辛そうな顔で父親である陛下に縋り付いた

「父上!!父上!!わたしがわかりますか?父上・・・」
「王子・・・・・」

こんな彼を・・・・王子を見たことがなかった
あたしにも大事なひとがいた、大事なひとを亡くす辛さは痛いほどわかる
あたしは・・・・王子に辛い思いをしてほしくない
あたしが助けてみせる・・・!!

「王子、あたしがやります・・・・」


そう呟くと深呼吸をして集中力を高めていく
レントゲンを見るように陛下の身体を・・・・全身を見ていく
上半身が、特に胸のあたりに黒いものが覆われている
これはなんだろう?わからないけれどこの黒いオーラを消し去れば楽になれるはず
あたしはゆっくりと魔力を流し込む
イメージは浄化するような感じで・・・・
不思議なことにその瞬間陛下の身体が虹色にひかり輝くとあたり全体も虹色に光輝いた
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