満月の夜異世界へと繋がりました
この国の民族衣装なのだろうか
シルクのような生地の長い上着を羽織り襟元には細かい龍の刺繍がされている。立てた襟元のシャツに色鮮やかな柄のスカーフを巻いている。
腰には太いベルトを巻いてふくらはぎの辺りで膨らんでいるズボンのようなものを履いていて…それが妙に似合っていて全然嫌味じゃないくらい様になってる
たぶんあたしの視線を感じたんだろう、思わず目が合うと王子がニヤリと微笑んだ

「美結は俺の賓客だからこちらがもてなすのは当たり前のことだ、何も心配することはない」


「で、でもあの…ドレスとか別に作って貰わなくても大丈夫だよ!着換えとかあたしちゃんと持ってきたからもったいないよ!」


「美結…お前は俺の客だっていったろ?服のひとつやふたつどうってことはないからせめてもの俺の好意を受け取ってくれ」


そう言って頭をふわりと撫でられる
瞬間自分の顔が赤くなったのがわかってどうしたものかと慌ててしまう
けどそんな風に言われたら断りづらいよ……あたしは黙って頷くしかなかった


後々この部屋に泊まったことが波乱を巻き起こすことになるとも知らず
この時のあたしは王子との再会を素直に喜んでいるだけだった


< 89 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop