極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
『これからも未来の子育てには協力するけど、こんなおいぼれたおじいさんと一緒に住んでいたら、文香に素敵な出会いが訪れないからね』
 そう言われ、そんな気遣いは無用なのにと苦笑しながらも、いつまでも祖父に甘えているわけにはいかないと思い実家のそばにアパートを借りた。

 そんなおせっかいで優しい祖父が病に倒れた。
 今すぐ命にかかわる病気ではないとはいえ、高齢で年々体が老いているのは間違いなく、退院のめどもたっていなかった。
 
 母を亡くしたときの悲しみがよみがえり心細くなる。
 
 そんなことを考えるうちに視線が下に向いていたのに気付き、自分に活をいれるようにぺしんと頬を叩いて歩き出した。
 
 
 
 職場であるレストランに到着し、水色のワンピースに白いエプロンの制服に着替える。
 本当は九時からの勤務だけど、今は八時半。
 まだほかのスタッフは出勤しておらず、お店にいるのは三十代の三嶋店長だけだった。

「店長、おはようございます」
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