極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「別に、いやがってなんてないよな? ただ、俺は白石さんに仕事の指導をしていただけで……」
「本当に?」

 店長の言葉をさえぎって結貴は私に視線を向けた。

 私がうなずくことも首を振ることもできずにいると、小さくため息をつく。

「このレストランを展開する会社の社長とは父の代から親しくしてもらっています。コンプライアンスの順守を重要視するとても真面目な方でしたから、店舗で働くスタッフがこんな仕打ちを受けていると知ったらどう思うでしょうね」
「そ、それは俺を脅してるのか……?」

 顔色を変えた店長に、結貴は悠然と微笑む。

「いえ、ただの世間話ですよ」

そう言って掴んでいた店長の腕を離した。

                    
         

 私は仕事を終え、重い足取りで店を出た。

 結貴がファミレスにやってきてから、同僚のスタッフの加藤さんの態度がさらに悪くなった。
 今日は彼女に敵意を向けられ続け、精神的にかなり疲れた。
 
< 109 / 197 >

この作品をシェア

pagetop