極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「あ、白石さんおはよう。今日も早くからありがとうね」
「いえ、いろいろご迷惑ばかりかけているので。こちらこそありがとうございます」

 丸顔に優しい笑顔を浮かべる店長に、かぶりを振ってお礼を言う。

 未来のお世話や祖父のお見舞いで早退や遅刻をさせてもらうことが多いので、余裕のあるときはなるべく早めに来て仕事をするようにしていた。
 
 ホールの清掃をしながら各テーブルの紙ナプキンや調味料を揃える。
 それが終わった頃、ほかのスタッフが出勤してきた。
 
 今日出勤しているホールスタッフは私を含め三人。
 二十代の加藤さんと大学生の篠田さん。
 みんな女性だ。
 
 開店前にスタッフ全員で朝礼をする。
 その中で店長に「白石さんは今日、用事があって早めにあがるんだよね」と言われた。

「すみませんが、よろしくおねがいします」

 加藤さんと篠田さんに頭を下げると、冷ややかな視線を向けられ背筋がこわばった。

「じゃあ、今日も一日頑張ろう」

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