極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「でも今働いているファミリーレストランは……」
『そちらには、私のほうから連絡しますので大丈夫ですよ。お店に置いてある私物があれば自宅に届くように手配いたしますので』

 今どきの派遣会社のサービスってすごいんだな。

 ファミレスには少し落ち着いてから改めてあいさつに行こう。
 そう思いながら、『お願いします』と頭を下げて電話を切った。

 保育園にお迎えに行くと未来は私の顔を見た途端、「ママ、なにかいいことあった?」と首を傾げた。

「え?」
「なんだか、にこにこしてるよ」
 
 明日から新しい職場で働けると思っただけで、自然と笑顔になっていた。
 自分で感じていた以上に、今の職場の人間関係がつらかったのかもしれない。

「ママね、明日から違うところで働けることになったの」
「それはうれしいこと?」
「うん、うれしいこと」
「そっかぁ。よかったね!」

 しゃがみこんで、小さな未来とぎゅーっと抱き合った。
                
                  

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