極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 驚いて見上げると、不機嫌そうな結貴の顔があった。

「アラン。そうやって文香を誘惑するな」

 結貴は棘のある声で言って、私をアランさんから引き離す。
 意味がわからず目をまたたかせていると、アランさんが噴き出した。

「誘惑って。ただの世間話をしていただけだよ」
「でもお前、今文香に色目を使っただろ」
「素敵な女性をほめるのは、イギリスでは当然のことだけど?」
「ここは日本だ」

 目の前で繰り広げられる言い合いに、どうしていいのかわからず目を丸くする。

 険しい顔の結貴とは対照的にアランさんは面白くて仕方ないという表情だ。
 
 新しい職場が葉山製薬の社内カフェだというのにも驚いたけれど、副社長の結貴と秘書のアランさんがわざわざやってくるなんて。

「もしかして、私が今日からここで働けることになったのは、結貴が手をまわしてくれたの?」

 たずねると、結貴はぐっと言葉につまった。
 その表情ですべてを察した。

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