極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています

「履歴書を見たから覚えていたんだよ」
「本当にそれだけ？」
　
　アランは以前文香が働いていたレストランの場所もいつの間にか把握していたなと思い出し、念のため問いかける。

「まぁ、調査会社に依頼して文香さんのことはいろいろ調べたけど」
「調査会社を使うなんて、誰かに頼まれたのか？」
「まさか、俺の独断だよ。うちのボスが悪い女に騙されていたら困るから」

　完全に面白がる口調で言われ顔をしかめた。

「結貴は葉山製薬の副社長って立場なんだから、交際相手の身辺調査なんて当たり前だろ。おかげでおもしろいことがわかったよ。文香さんは五年前……」
「聞きたくない」

　アランの言葉を厳しい声で遮った。

「俺は文香を愛しているし信頼している。彼女の知らない場所でこそこそ調べた情報なんて聞きたくない」
「ふーん」

　にらみつける俺の視線に、アランはゆかいそうに肩を上げる。

「そんな意地を張らないで素直に聞いておけばいいのに。結貴にとって悪い話じゃないよ？」
「余計なお世話だ」