極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています

 口では謝りながら、視線が一層冷たくなる。

「それから白石さん、休憩入っていいから」
「あ、はい」

 私がうなずいたのを確認して店長が裏に戻っていく。
 その姿が見えなくなると、加藤さんは大きくため息をついた。

「はー、やってらんない。白石さんを見習って、だって」
「あきらかに白石さんを贔屓してますよね」
「美人は得だよね~。ていうか、媚びを売るのがうまいだけか」
「店長独身だし、再婚相手に狙ってるんじゃないんですか?」

 悪意のある言葉浴びせられ、胃の上りに不快感がこみ上げる。

 勤務中にまじめに仕事するのは当たり前だし、私は媚びなんて売ってません。
 そもそも再婚なんて、考えたこともない。
 
 そう言い返したかったけれど、なんとか飲み込こんだ。
 文句に文句で返したって、険悪になる一方だ。

「休憩取らせてもらいますね」

 そう言うと、彼女たちは「どうぞ」と目も合わせずに背を向ける。



 私は休憩室に入り、大きく息を吐き出した。

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