極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
用意されたワンピースは上品なネイビーのシフォン生地。
ウエストはリボンできゅっと絞れるようになっていて、大人っぽくて素敵だった。
子育て中でカジュアルな格好ばかりしている私は、めったに着ないデザインだ。
ワンピースに合わせて、靴やコート、バッグまでそろえられていて、用意周到すぎる結貴の気遣いに言葉が出なくなる。
「ありがとうございました」とサロンのスタッフさんたちにお礼を言って、生まれ変わったような気分で街に出た。
こうやって、着飾ったのはいったい何年ぶりだろう。
お店のガラスに映った自分の姿に、なんだかくすぐったい気分になった。
歩きながらスマホを取り出し画面に触れる。
連絡先のリストから選び出したのはもちろん結貴の番号だ。
『もしもし』と電話から低く優しい声が響いた。
「もしもし、おじいちゃんとグルになって私を騙したでしょ」
少し怒った口調で言うと、電話の向こうにいる彼が小さく笑う。
『ごめん、怒ってる?』