極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「ううん。感謝してる。気を遣ってくれてありがとう」

 私もすぐに笑顔になり首を横に振りながらお礼を言った。

「今美容室を出て帰るところなの。なにかお礼にお土産を買おうかなと思ったんだけど……」
『お土産なんていらないよ』
「でも」
『綺麗になった文香を見せてもらえるのが、俺にとってはなによりもご褒美だから』
「な、なに言ってるのっ」

 甘い言葉を耳に吹き込まれ、動揺で息が止まりそうになる。

『みらいも、きれいになったママをみたーい!』

 少し遠くから無邪気な声が聞こえた。
 元気いっぱいの様子が伝わってきて、笑みがこぼれた。

『ふたりで楽しみに待ってるから、帰っておいで』
「うん、これから帰るね」

 そう言って電話を切る。
 私は軽い足取りで自宅へと向かった。
               
                 

 お留守番中、未来はお利口にしていたかな。
 結貴を困らせなかったかな。
 
 なんて思いながらアパートへと歩く。
 
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